医療事務の仕事とは?仕事の特徴、向いている人、給与相場を解説
医療事務は、病院やクリニックなどの医療機関が日々の運営を行う上で大切な役割を果たしている事務職です。具体的には、患者さんの受付、診察の会計業務といった受付に関する業務。医師や看護師と患者さんとの間の橋渡し役。診療費用の計算や健康保険組合への請求処理など費用計上面にも関わっています。
この記事では、医療事務という仕事に焦点を当て、その特徴、向いている人の特性、そして給与相場について解説します。事務職に興味を持ちつつも、どのような仕事が自分に合っているかを探している方々にとって、医療事務は魅力的な選択肢の一つとなるでしょう。
目次
医療事務とは?
医療機関においてサポート役となる医療事務業務は、以下のように分かれます。
●受付・会計業務
●クラーク業務(外来クラーク、病棟クラーク)
●レセプト業務
それぞれ順番に見ていきましょう。
1.受付・会計業務
医療事務の中でも、特に患者さんとの最初の接点となるのが「受付・会計業務」となります。
患者さんは、ここでのかかわりから医療機関に対する第一印象が作られるため、この仕事は医療機関の品質とサービスを代表する「顔」としての役割も果たすことになります。
●仕事内容
・患者さんの来院時の受付、初期対応、予約管理。
・患者情報の入力、診察後の会計処理。
・領収書の発行、支払い方法の案内。
●医療機関内での位置づけ
・患者さんと医療機関との最初の接点を担う。
・医療機関への印象を作り、患者さんに安心感を提供する。
●他の業務との違い
・直接的な患者対応が多いため、対人コミュニケーションが重視される。
・情報の正確性と迅速な対応が求められる。
●仕事の難易度
・繁忙時は多くのタスクを同時に処理する必要が出てくる。
●病院規模による違い
・大規模病院:受付・会計業務が専門化されている。業務量自体は多い。
・小規模クリニック:広範な業務を担う。地域密着のクリニックも多く、患者さんとの親密な関係を築きやすい所が多い。
2.クラーク業務(外来クラーク)
クラーク業務は、医療事務の中でも特に情報管理とコミュニケーションの面で大切な役割を担います。医療機関のスムーズな運営に貢献し、患者さんが安心して治療を受けられる体制づくりに影響を与えます。
その中でも外来クラークは、日々の外来患者の管理と医師の診療サポートを担っています。
●仕事内容
・患者さんの予約管理、診療スケジュールの調整。
・医師の診察サポート、医療記録の整理。
・患者さんの医療情報や診療データの入力、更新。
●医療機関内での位置づけ
・外来患者の管理と医療サービスの円滑化を担う。
・医師と患者さんの間の情報伝達と調整役。
●他の業務との違い
・医師と直接コミュニケーションを取りながら、診療の効率化に貢献する。
・患者さんの来院から退院までの一連の流れを管理。
●仕事の難易度
・マルチタスクと迅速な対応が求められる。
・正確な情報管理と患者さんへの対応スキルが重要。
3.クラーク業務(病棟クラーク)
病棟クラークは、入院患者の継続的なケアと病棟の運営サポートの役割を担っています。
●仕事内容
・入院患者の医療記録の管理と更新。
・看護師や医師の指示に基づく文書処理。
・患者さんの健康状態や治療の進捗情報の管理。
●医療機関内での位置づけ
・病棟の日常運営を支える中心的役割。
・患者ケアの質の維持と改善に貢献。
●他の業務との違い
・長期的な患者管理に関わり、医療チームとのより緊密な連携が求められる。
・継続的な患者情報の追跡と更新が必要。
●仕事の難易度
・長期間にわたる患者情報の正確な管理が求められる。
・病棟内の様々な医療従事者との連携、コミュニケーション能力が重要。
4.レセプト業務
レセプト業務は、医療事務の中でも医療保険制度への理解が必要となる、専門性が際立つ仕事となります。
医療機関の経理・財務面で貢献する仕事であり、正確で効率的な作業が求められます。
●仕事内容
・診療報酬の計算と、それに基づく請求書の作成。
・患者さんの診療内容に応じた保険適用の判断。
・健康保険組合や公的機関への請求書の提出と調整。
●医療機関内での位置づけ
・医療機関の経済的安定と健全な運営を担保する役割。
●他の業務との違い
・医療保険制度に関する専門的な知識が必要。
・財務と法規制に関連する業務が多く、細部にわたる正確性が求められる。
●仕事の難易度
・高度な専門知識と注意深いデータ処理能力が必要。
・規制やガイドラインの変更に柔軟に対応する必要がある。
医療事務に向いている人の特徴
●コミュニケーション力
情報を正確に伝達し、患者さんや医療スタッフとの円滑なコミュニケーションを取る力。時には患者さんの不安を緩和することも必要です。
●細かい作業への注意力
レセプト処理、文書の処理、データ入力、記録の保存など細かい作業への集中力と正確性。
●柔軟な対応
忙しい環境や予期せぬ状況、急な変更、要望に対応する柔軟性。
●段取り力
様々なタスクに優先順位を設定し、限られた時間内で効率よく行っていく力。
●チームワーク
医療チームの一員として、医療スタッフと協力的に仕事を進めていく姿勢。
医療事務の仕事に役立つ資格
医療事務の仕事を行う上で、専門知識を深めてキャリアアップにつながる可能性がある資格を、以下に紹介いたします。
1.医療事務能力検定試験
・医療事務者の中での知名度
医療事務の資格の中でも比較的知名度が高い資格の一つで、医療事務の基本的な資格として知られています。
・試験内容
医療事務に必要な専門知識やスキルを証明する資格であり、医療保険の仕組みや医療費の会計方法、診療報酬請求の仕組み等に関する問題が出題されます。
・キャリアアップへの優位性
医療事務に必要な専門知識やスキルを証明する資格であり、就職や転職の際に有利に働くことがあります。
・難易度
他の医療事務の資格に比べ、比較的難易度が低いとされています。合格率は、1級が約60%、2級が約70%、3級が約80%となっています。
2.診療報酬請求事務能力認定試験
・医療事務者の中での知名度
医療事務者の間で広く知られており、診療報酬請求事務に従事する者にとっては、資格取得後のキャリアアップにつながると期待されている資格となっています。
・試験内容
医療保険事務に関する知識や技能を問う試験です。医科と歯科に分かれており、それぞれ学科試験と実技試験を行います。
出題範囲は、日本医療保険事務協会が出している「診療報酬請求事務能力認定試験ガイドライン」に従って出題されます。
・キャリアアップへの優位性
診療報酬請求事務に従事する者のスキルアップにつながり、キャリアアップにもつながることが期待できます。
・難易度
医療保険事務に関する知識や技能を問う試験で難易度は高く、医科が約29%、歯科で約39%とされています。また、7月の合格率がやや低く、12月の方がやや高くなるとも言われています。
3.医療事務認定実務者
・医療事務者の中での知名度
「医療事務認定実務者」は、医療事務の資格の中でも比較的新しい資格であり、知名度はまだ高くありません。
・試験内容
医療事務に関する基礎知識と、診療報酬明細書 (レセプト)作成を基本とした認定試験です。試験内容は、接遇業務やマナーなど受付業務に関する問題が中心です。
・キャリアアップへの優位性
医療事務に関する基礎的な知識が身についていることを証明できる資格です。医療事務は決して資格が必須な仕事ではないため、人手の足りない医療機関では、無資格者を求人募集するケースも多く見られます。
その中で医療事務認定実務者を取得していることは、就職や転職の際にも大きな強みとなるでしょう。
・難易度
学科試験と実技試験それぞれで60%以上の正答率が必要です。他の資格に比べ比較的難易度が低いことでも知られており、合格率は60%から80%。初心者でもチャレンジしやすい資格となっています。
4.医療事務管理士
・医療事務者の中での知名度
幅広く認知されており、就職や転職にも有利な人気の資格です。日本で最初に医療事務資格として認定されたという歴史もあり、社会的信頼度も高いです。
・試験内容
学科試験では医学一般、法規、保険請求事務に関する知識が出題されます。実技試験では診療報酬明細書(レセプト)の作成と点検に関する問題が出題されます。
・キャリアアップへの優位性
医療事務の業務全般に関する広範な知識を身につけることができるため、医療事務職でのキャリアアップに有利です。受付業務、カルテ管理、診療費の計算など、事務業務の幅広い領域で活用できます。
・難易度
合格率は医療分野60%、歯科分野70%程度。他の医療管理事務関係の資格に比べれば高いと言えます。
5.メディカルクラーク(医療事務技能審査試験)
・医療事務者の中での知名度
高い。医療事務関連の資格の中で受験者数や合格者が多く、毎年1万人以上の受験者がいる、医療事務を目指す人にとってスタンダードな資格とされています。
・試験内容
学科試験では医療保険制度、高齢者医療制度、公費負担医療制度、介護保険制度、医事法規一般などの知識が出題されます。実技試験では、患者に対するサービスやマナー、診療報酬請求事務業務、診療報酬明細書(レセプト)の点検などが行われます。
・キャリアアップへの優位性
医療事務の知識とスキルを証明することにより、就職や転職活動に有利に働く可能性があります。レセプト業務や窓口業務など、医療事務の幅広い分野に対応できる資格です。
・難易度
中程度。合格率は約70%で、2021年度は医科の方が78%、歯科が69.2%で医科の方が高くなっております。但し、同年の受験者数は医科が17,162人、歯科が1,303人と受験者人数に大きな差があります。
学科と実技の両方に合格する必要がありますが、事前準備によって合格は十分可能な内容です。
6.医療秘書技能検定
・医療事務者の中での知名度
一定の知名度があり、院長や医師の秘書業務を担う医療秘書を目指す社会人や学生にとっては、学習の一つの目標になります。医療機関にとっては志望者の知識習得レベルの判定材料として、教育機関にとってはカリキュラムの改善、教授法の向上のために検定実施に協力するなど広く認知されています。
・試験内容
以下の3つの領域で構成されています。
領域Ⅰ:医療秘書実務、医療機関の組織・運営、医療関連法規
領域Ⅱ:医学的基礎知識、医療関連知識
領域Ⅲ:医療事務(レセプト作成、診療報酬点数表の理解)
試験はマークシートと記述式が併用された形式で行われます。
・キャリアアップへの優位性
医療秘書としての専門知識と技能を証明することができ、医療機関での事務関連職においてキャリアアップに役立ちます。特に2級以上の資格は、医療実務者にとって重要とされています。
・難易度
領域Ⅰ~Ⅲ全てで60点以上取ると合格となります。4つのグレード(1級、準1級、2級、3級)があり、それぞれ難易度が異なります。
3級は比較的容易で数週間の学習で取得可能ですが、1級は実務経験がないと合格が難しいとされ、難易度は高いです。合格率は、3級で約70%、2級で約50%、準1級で20-30%、1級で10-20%程度です。
医療事務の給料相場
厚生労働省の「令和4年度賃金構造基本統計調査」によると、医療事務の平均年収は4,374,300円(平均年齢42.7歳)です。
また、Indeedの採用市場レポートの2023年11月調査によると、平均年収は4,170,885円、月収は202,344円、時給は1,249円となっています。
関西圏の2府4県では、次のようになっています。
(年収、月収、時給の順)
大阪府:3,893,937円、203,230円、1,248円
京都府:3,940,383円、201,436円、1,232円
滋賀県:4,251,027円、203,150円、1,209円
兵庫県:4,070,761円、196,572円、1,135円
奈良県:データなし、190,419円、1,081円
和歌山県:4,454,014円、198,380円、1,115円
まとめ
医療事務の仕事は、医療機関が円滑に運営する上で必要不可欠な仕事であり、医療機関の資産を守る役割も担っていると言えます。
働き手にとっても、単なる事務の仕事にとどまらず、ヒューマンスキルを活かし、医療業界の専門知識を身につけキャリアアップが狙える、息の長い仕事でもあります。医療への貢献もしており、社会貢献性の高いやりがいある仕事です。
事務職を目指す方にとって、この医療事務の仕事は価値あるキャリアの選択肢の一つとなり得るものです。
■監修:株式会社ジャパンナヴィゲイト
2000年創業。京都市伏見区に本社を持つ、地域密着型の人材サービス会社。製造、物流系の人材派遣、人材紹介を強みとしている。
近年では医療系領域のサービスに注力。医薬品物流、医療材料物流、院内物流、病院内業務への人材派遣、請負実績を伸ばしており、地域医療への貢献に取り組んでいる。
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